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社長インタビュー

(2019年9月)

代表取締役社長 深澤祐二 画像


「変革2027」の実現に向けて

――2018年7月にグループ経営ビジョン「変革2027」を発表し、2年目に入りました。

「変革2027」で目指すのは、「ヒト」を起点として、輸送サービス、生活サービス、IT・Suicaが融合したサービスを作り出すことです。これは生活インフラを支える重層的で“リアル“なネットワークを持つJR東日本だからこそできるサービスですし、また当社グループがやるべきことだと考えています。当社グループは、技術革新やビッグデータを融合させて新たな価値を創造し続ける「ヒト」を中心としたエコシステムを構築していきます。

「変革2027」はいよいよ本格的な実行フェーズに突入します。2017年に策定した生活サービス事業成長ビジョン「NEXT10」に続き、2018年は「サービス品質改革中期ビジョン2020」と「グループ安全計画2023」をスタートするとともに、「技術イノベーション推進本部」を新設するなど、「変革2027」を力強く推進するための基盤を着々と整えてきました。今後は、これらをベースに、「鉄道インフラ起点」から「ヒト起点」への転換を軌道に乗せていきます。「変革2027」で描く未来の実現に向けて、「安全」「生活」「社員・家族の幸福」という三つのフォーカスポイントに沿って、具体的に施策を加速していきます。

あわせて、来年に迫った東京2020オリンピック・パラリンピックにおいて、旅客鉄道輸送サービス部門のオフィシャルパートナーとしての役割を全うできるよう、万全の準備をしていきます。ハード面においては、競技会場周辺の駅やターミナル駅の改良工事をはじめ、セキュリティ強化やバリアフリー化、案内サインの統一・多言語化といった対策にしっかりと取り組まなければいけません。ソフト面においても、オンライン英会話教育等を通じて社員の英語対応能力を向上させるほか、輸送障害時における多言語案内による情報提供の充実を図っていきます。また、朝通勤時間帯の輸送と観客輸送を両立するための「TDM(交通需要マネジメント)」の仕組みづくりなどの対策も着実に進めていきます。こうした取り組みを通じて質の高いサービスを提供することにより、お客さまのご期待に応え、2020年以降の社会にハード・ソフトの両面で「レガシー(遺産)」を引き継ぐとともに、インバウンド需要の更なる拡大へつなげていきたいと考えています。

その意味で、2019年9月から11月にかけて開催されるラグビーワールドカップ2019日本大会での経験を、東京2020オリンピック・パラリンピックに生かしていかねばなりません。つまり、ラグビーワールドカップの期間中、2020年に向けて準備している施策を実行し、新たに見えてきた課題に対して、改善策を着実に積み上げていく必要があります。

JR東日本グループの強みを活かし、技術革新や、移動・購入・決済のデータ融合により新たな価値を創造する。 画像

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安全

――「変革2027」のフォーカスポイントの一つである「安全」に関して、どのような取り組みを進めていきますか。

グループ一丸となって「究極の安全」を追求し、当社グループのすべての事業、サービスの基盤である、お客さまや地域の皆さまの「信頼」をさらに確固たるものとしていきたいと考えています。

2018年11月に策定した第7次安全5ヵ年計画「グループ安全計画2023」で掲げた三本柱、すなわち「一人ひとりの『安全行動』の進化と変革」「『安全マネジメント』の進化と変革」「新たな技術を積極的に活用した安全設備の整備」に向けた取り組みを、グループ会社やパートナー会社、協力会社と一体となって愚直に進めていきます。「変革2027」で掲げた目標は、2022年度に鉄道運転事故20パーセント減(2017年度比)です。

特に力を入れているのが、駅ホームと踏切における安全性向上です。駅ホームでは、ホームドアや内方線付き点状ブロック、CPライン(※)等の整備を進めています。また、踏切では、新型障害物検知装置や全方位警報灯等の整備拡大を進めており、より安全な駅ホームと踏切の実現を目指します。

※【CPライン】「Color Psychology(色彩心理)ライン」の略語で、人が危険と感じる度合いが高い色彩を用いてラインを引くことにより、視覚的・心理的にホーム端部の危険性に対して注意喚起を行うもの。

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ESG経営の実践

――社会からの信頼を確固たるものとするには、「ESG(環境・社会・ガバナンス)経営」の実践も欠かせませんね。

1987年の発足時、当社グループは「地域密着」を経営の原点に掲げ、CSR(企業の社会的責任)をベースに据えた経営を進めてきました。ただし、人口減少や高齢化、地域経済の衰退、地球環境問題をはじめとする社会的課題がかつてないほど深刻なかたちで顕在化しつつある今日、社会の一員として果たすべき責任を全うし、地域社会の持続的発展にコミットする姿勢がこれまで以上に求められています。事業活動を通じて地域社会の課題解決に取り組む「ESG経営」に、グループ一体となって努力していきます。

まず、「G」すなわちガバナンスの観点から、安全が経営のトッププライオリティであることを全社員の共通認識として徹底し、「究極の安全」に向けて、グループ一体となって不断の努力を積み重ねていきます。現場第一線の社員との車座での意見交換など、積極的なコミュニケーションによって組織の壁を打破することで、リスクを事前に把握し、強固なコンプライアンス体制を築きあげていく方針です。

その上で、「S」すなわち社会の観点から、「サービス品質改革中期ビジョン2020」のもと、首都圏在来線や新幹線を中心に、輸送障害の発生防止や慢性遅延の緩和などに取り組み、鉄道輸送のサービス品質をさらに向上させていくことが欠かせません。数値目標として、2022年度までに、当社原因による輸送障害を東京100キロメートル圏の在来線で50パーセント減(2017年度比)、当社管轄エリアの新幹線で75パーセント減(2017年度比)を掲げています。目指すは、「顧客満足度 鉄道業界No.1」です。

代表取締役社長 深澤祐二 画像

当社グループに対するお客さまや地域の皆さまのご期待はこれまでになく高まっています。社会的責任を全うするためには、当社グループの成長を目指すだけでなく、私たちの展開する事業が社会に与える影響を常に考慮して経営に当たらねばなりません。2018年度末までに131箇所の子育て支援施設を開設したほか、「JR東日本 Technical Intern Training」を通じた国際鉄道人材の育成、鉄道博物館をはじめとする文化活動の支援など、社会的な課題の解決に向けた取り組みを加速させていく方針です。

また、地域再発見プロジェクトを通じた取り組み等、当社グループだからこそできる「地方創生」を実践していきたいと考えています。具体的には、秋田や新潟、土浦、青森等の地方中核駅を中心としたまちづくりをはじめ、観光振興や六次産業化など、「コンパクト&ネットワーク」化の取り組みを地域と一体となって進めます。

これに加え、「E」すなわち環境については、鉄道はこれまで、飛行機やバス、自動車等に比べて環境優位性の高いモビリティといわれてきましたが、近年では電気自動車や燃料電池自動車の登場により、自動車の環境性能が飛躍的に向上してきました。当社グループは発電から消費まで全てに携わっているため、「地球温暖化防止」へ向けたトータルなエネルギーマネジメントの実践や、水素をエネルギー源としたハイブリッド車両(燃料電池)の実証実験に取り組むなど「エネルギー多様化」へのチャレンジを積極的に行っています。

JR東日本グループが事業を通じて社会的課題の解決に取り組み、地域社会の発展に貢献することにより、地域の皆さまやお客さまからの「信頼」を高め、当社グループの持続的な成長につなげる。 画像

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生活

――第二のフォーカスポイントである「生活」に関し、どのような取り組みを進めますか。

「ヒト」を起点とした新たな価値・サービスの創造や、技術と情報を中心としたネットワークの強化に取り組みます。これにより、便利で安心な日常生活や多様で活発な相互交流など、すべての人の「心豊かな生活」を実現していきます。

それには、「目的地を創る」「駅を楽しく、魅力的に」「移動を楽しく、快適・便利に」の三つの観点から、輸送サービスを質的に変革していくことが欠かせません。2019年度下期には相模鉄道との相互直通運転を開始するとともに、首都圏の多方面からシームレスにつながる羽田空港アクセス線について、環境アセスメントに着手しました。また、試験車両「ALFA-X」を活用した次世代新幹線の開発や、ドライバレス運転の実現に向けた実証試験など、さまざまな取り組みを加速していきます。

また、生活サービス事業成長ビジョン「NEXT10」のもと、「くらしづくり(まちづくり)」の観点から、2019年11月に開業予定の渋谷スクランブルスクエア第I期(東棟)をはじめ、「WATERS takeshiba」開発計画や川崎駅西口開発計画、JR横浜タワーなど、東京2020オリンピック・パラリンピック前の開業を目指し、今後の成長を牽引する施策を推進していきます。特に、「グローバルゲートウェイ品川」については、その中心となる高輪ゲートウェイ駅においては新たな技術開発の成果などを積極的に導入し、今までとは違う未来の駅の姿を感じていただくことを目指します。2019年4月に都市計画が決定したことを受けて本格的な工事に着手し、2024年頃に「新・国際交流拠点」としてのまちびらきを行うための準備を進めていきます。

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Suica・MaaS

――シームレスな移動の実現に向けて、「Suicaの共通基盤化」や「MaaS(マース/モビリティ・アズ・ア・サービス)」に関する取り組みが注目を浴びていますね。

まず、Suicaをあらゆる場面で利用可能にするため、「Suicaの共通基盤化」を進めます。モビリティの分野では、2019年度末に新たな新幹線IC乗車券サービスを開始します。その後は、クラウド技術の活用により、地方の在来線への低コストでのSuica導入を目指すと共に、地方の二次交通にて、地域連携ICカード導入を行うことで、Suicaを使えるエリアを広げていきたいと考えています。また、ライフスタイルの分野では、「J-Coin Pay」や「楽天ペイ」との連携に取り組みました。FinTechを含めたさまざまな決済手段、アプリケーションとの連携強化などにより、Suica利用の入り口として、チャージ箇所を増やすと共に、出口として決済箇所も増やしていくことで、その利便性をより一層高めていきたいと考えています。

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それと同時に、技術イノベーション推進本部を中心に、オープンイノベーションにより他の企業等との連携を積極的に進め、移動のための情報検索や購入・決済サービスをワンストップで提供する「モビリティ・リンケージ・プラットフォーム」を構築し、お客さまがシームレスに移動することのできる環境を整えていきます。

例えば、2019年春の「静岡デスティネーションキャンペーン」開催に合わせ、東京急行電鉄等と連携し、「観光型MaaS」の実証実験を実施しました。伊豆エリアの二次交通を検索、予約、決済できる機能を活用して、エリア内に点在する観光拠点等をシームレスに移動できるようにして、観光周遊の促進や商業の活性化に対する効果を検証していきます。このように、交通事業者や観光事業者など、さまざまなプレーヤーとの連携を強化し、「モビリティ・リンケージ・プラットフォーム」をかたちにしていきたいと思っています。

様々な決済手段やアプリケーションと連携し、あらゆる場面でSuicaを利用可能とし、Suicaの共通基盤化を推進する。 画像

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技術革新

――「変革2027」で掲げる新たな価値の創造に向けて、どのような技術革新を行っていくのでしょうか。

「変革2027」では、業務改革のさらなる推進を通じ、人ならではの創造的な価値を提供する姿を描いています。

今後の取り組みとして、「駅」、「運輸」ではチケットレスや自動運転等の検討を進めていきます。山手線E235系を用いて自動列車運転装置(ATO)の試験を行ったほか、大船渡線のBRTにおいても自動運転実験用バスの技術実証を行いました。また、「車両」、「設備」においては、線路設備モニタリング装置や電力設備メンテナンスにおける無線式センサの導入拡大等、スマートメンテナンスの実現によって安全性・効率性向上に向けた取り組みを継続します。

さらに、「モビリティ変革コンソーシアム」における各種実証実験を推進しているほか、「JR東日本スタートアッププログラム」では実証実験のフィールドを更に拡大するなど、オープンイノベーションを加速しています。

これらの取り組みを通じてイノベーション投資の効果を発揮し、「生産性向上」、「収益力向上」、「サステナブルな事業運営」の実現を目指します。

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地方の活性化

――すべての人の「心豊かな生活」を実現するには、地方の活性化が欠かせませんね。

観光振興に関して、エリア内の各地で多彩な観光キャンペーンを展開し、地域の皆さまと一体となって観光資源の発掘、情報発信に力を入れていきます。2019年10月から開催する「新潟県・庄内エリアデスティネーションキャンペーン」においては、新潟市内を中心とした「観光型MaaS」の実証実験を行う等、新たな取り組みにも挑戦します。2021年4月から9月には、東北6県を対象とした「東北デスティネーションキャンペーン」を、初めて半年に亘って開催することを予定しています。沿線独自の駅や風景、観光地と連動した「のってたのしい列車」や、広域観光ルートの開発など、ネットワークをより強く意識した観光振興を展開し、当社グループだからできる観光振興のあり方を追求していくとともに、2030年に訪日外国人旅行者数を六千万人とする政府目標の達成に向けて、その一翼を担い、首都圏から東北・信越エリアへの観光流動の促進に力を入れていきます。

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世界を舞台に

――「変革2027」において「世界を舞台に」を1つの切り口として、国際事業のビジネスモデルの確立を目指していますね。

国内でこれまで培ってきた鉄道のオペレーション&メンテナンスの技術やノウハウのほか、エキナカや駅周辺での生活サービス、IT・Suicaサービスなど、当社グループの総合力を生かして、世界を舞台に、より豊かなライフスタイルを提供していく方針です。

現在、最も力を入れているのは、ムンバイ〜アーメダバード間で進めているインド高速鉄道プロジェクトです。同プロジェクトは今年、技術基準の作成や設計の段階から、建設工事が本格的に始まる段階に移るなど、大きな節目を迎えます。現地人材の育成など、オペレーション支援の準備にも力を入れていきます。

また、生活サービスの海外展開も加速させます。ルミネ・アトレといったショッピングセンターの進出に加え、2019年4月にはシンガポール・チャンギ国際空港の商業施設にレストラン・カフェ・物販の複合業態新ブランドを開業するなど、アジアを中心にさまざまな生活サービス事業を展開していきます。

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グローバル人材の育成

――グローバル人材の育成については、いかがでしょうか。

現在、多くの社員が海外で業務を遂行しています。海外での仕事の経験は、社員のマインドを変え、大きな成長を促します。海外での仕事を首尾よく成し遂げるためには、現地の人々とのコミュニケーションはもとより、社会・文化的な背景の違い、技術水準の違いなど、さまざまな困難を克服せねばなりません。こうした厳しい環境に身を置くことが、社員のポテンシャルを引き出し、新たな知恵や創意工夫を生むきっかけになります。社員には、グローバルな仕事を通じて得た経験を国内ビジネスに還元し、「変革」につなげていってくれることを期待しています。

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キャッシュの使途・数値目標

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――2020年3月期の設備投資予定額を7,680億円とするなど、「変革2027」の実現へ向けた投資も加速していますね。

「変革2027」において、2022年度の連結営業収益3兆2,950億円、連結営業利益5,200億円といった数値目標を掲げました。これらを達成するため、積極的な設備投資を行い、収益規模の拡大、経営基盤の強化を目指しています。併せて、総還元性向を中長期的に40%とすることを見据え、2020年3月期にも継続して増配と自社株買いを行います。また、債務返済能力を考慮し、連結営業収益、利益に応じた有利子負債残高とします。このように、変化の激しい経営環境の中でしっかりと「変革2027」の実現に向けた取り組みを進めていきます。

これからの10年間を見据えた「変革」に挑戦するため、その中間点の5年後(2022年度)をターゲットとして数値目標を設定する。 画像

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